先週東京の青山で、友人とお昼ご飯を食べた後に(まあなんてお洒落)
渋谷までダラダラ歩きながらふっと目に入った「古本屋」で見つけた一冊。
括弧括りにしたのは、この本屋が個人商店であり、某BOOK *FFのようなチェーン展開されていないことで
傑作で古典揃いだったから。京都には比較的そんな個人経営の古本屋が多い、と思っているんだけど
東京の、しかも渋谷近くにこんなところがあったのね!!と一人で感傷深い気持ちになってしまった。
おかげで香港行きの飛行機を乗り過ごしそうになったことはいえないけれど、素敵なお店だった。

ラガナ一家のニッポン日記 (〔正〕) (角川文庫 (5525))
1983年1月発行
当時の朝日新聞に掲載されていた、アルゼンチン人ドミニコ・ラガナによる日本での生活の随筆・コラム集。
彼は1973年に、18年の独学を経て来日。
奥様・息子さんと共に過ごす日本を彼の視点で描いた作品。

さて、レビューの前に1つ書いておきたいことがある。
帰国してからもうすぐ5ヶ月。私のスペイン語に変化が生じている。
周囲の人間からしてみると、
「使ってないからだよ」
「勉強していないからだよ」etc,. らしいが、
それだけでもない気がする。(実際、使う比率はずっと低くなったし、多少はスペイン語が下手になっているとも思う、が。)

①私がメインに使っている「感覚」が、スペイン語(特にチリ)文化コンテクストから日本語コンテクストに移行してしまった。
(コンテクスト・・・一般的に文章の前後の脈略・文脈のことを言うが、社会学では、”前提となる事柄”として使われることが多い)
②スペイン人・ペルー人・メキシコ人ばっかりと出会う為、チリ弁がそげてきている気がする。

①に関しては、低コンテクスト文化・・・情報の大半が明確に表現されるべき文化、とされるチリの文化から世界で一番といわれている、日本のような高コンテクスト文化・・・情報のほとんどが身体的コンテクストの中にあるか、個人の中にある為、情報量が非常に少ない文化に慣れてきた、ということ・・・うーん、長ったらしいなあ
例えれば、スピルバーグ映画と小津安二郎映画の違い、といったところでしょうか。
チリの友人には、「美紗子、冷たくなったよね」とか「クールぶらなくても」といわれる回数が増えました。
ちょっと彼らにとったら舌ったらずなのかもね、説明が少ないというか。

②に関して
電話で「いや~アボカド入りのサンドイッチをフエンテ・アレマナで食べたいなあ!」と友人に行った時に
“Extrano demasiado el sandwich de aguacate de la Fuente Alemana!”
と自信満々にいったんですが
数秒の沈黙の後「demas, de palta po・・・(ああ、アボカドね)」と返ってきた。
そう、チリではアボカド(Aguacate)のことをpaltaというのだ。 
ヤラれた。4ヵ月半でこの愛すべきpaltaという単語を忘れるなんて。
そのほかにも、ちょっと気取った「標準語(スペインのスペイン語)」っぽくなってきている、単語だけ、と言われる。

そんなわけで最近スペイン語恐怖症だったりしますが、めげずに使わねば。

本題に戻ります。
ラガナさん、スペイン語などを一切メディアとして通さずに日本語で書いた文章を載せているんですけれど、
さすが「日本文学研究者」 脱帽物の日本語です。
何がすごいって、日本語が包括している文化までを理解しているのがわかるのです。
つまり、上で書いた、①の私とは逆バージョンですね。
(文章の中で、在ア時のこと、「使わずに押し入れの中にしまっておく」というフレーズがありましたが
アルゼンチンに押入れないでしょう、って突っ込み。そういう意味なんですよね。)

この本の各章の終わりに「読者からの便り」というものがあるんですが、私もよく言われたような妬みとも
批判ともつかないような便りがたまにあり、、
  「・・・なるほど君は外国人としてこれ位の日本文が書けるのは敬服に値します。
  しかし、内容に現れている日本観はまったくそkれています。
  (中略)三十年もここに住んだものとして君のもっと真剣な勉強を祈ります。」(P72)
どこの国にもこういうことを言う人はいるんだなあ、と思います。
私も非常に多くの人からこういう批判は受けました。日本人チリ人問わず。

ラガナさんは、自分の日本語に関して次のように述べていました。
  「いくら苦心しても、日本人のように日本語を書くことは不可能だと思う。しかし
  エキゾチックな日本語に好奇心をそそられるらしい日本人がなんと言おうとも、ガイジンらしくない日本文を書くために、
  努力を惜しまないつもりだ。だからといって、日本人になりたいというわけではない。
  ぼくは、あくまでも自分でしかありたくないのだ。」(P60)

うーん、素敵ですね。こんなに素敵なアルゼンチン人が1970年代に日本に、しかも奨学金で訪れていたこと、
とても誇りに思います。たまにはやるじゃん、奨学金制度。って偉そうにも思っちゃいます。

この本、読み易い上に、社会学・文化学・言語学等勉強している人におすすめです、
菊と刀―日本文化の型 (講談社学術文庫)
菊と刀、現代POP版とでもいいましょうか?(笑)